ノートPC配布
自発的な学習を促進することを目的として子どもたちに個人用ノートPCを提供するOLPC(One Laptop per Child)プログラムの効果
- 評価指標
数学と国語の点数
- 評価指標
配布されたPCについてのスキルテストのスコア
- 評価指標
WindowsOSやインターネットについてのテストのスコア
ポイント
文献選定/レビュー作成
背景
OLPC(One Laptop per Child)プログラムは自発的な学習を促進することを目的として、発展途上国の子どもたちに個人用ノートパソコンを提供している。現在までに50カ国以上の子どもたちに配布された約240万台のOLPC XOノートパソコンのうち、ペルー購入台数は3分の1以上を占めている。通常これらのPCは学校を経由して子供達に提供されるが、OLPCの創設者たちは自学自習を強調しており、これは教室の外、特に家庭で使用されたときにも有益であることを示唆している。
介入
- 小学生にノートパソコンを配布する
- 配布するPCは、小学生に使いやすいように設計されている。(軽くて丈夫など)
- OSはLinux
- 教育省によって選ばれた32のアプリケーションが予めインストールされている。
- ワードプロセッサや絵を描くアプリ
- テトリスや数独などの知的ゲーム
- 音楽の作成や編集ができるアプリ
- 録画録音アプリ
- Wikipediaの一部
- 年齢相応な電子書籍 など
- 新しいアプリをインストールすることは可能だったが、ログを見てみるとPCをインターネットに接続せずに既存のアプリを使用している生徒が多いことがわかった。
評価指標
- 全国学力調査の算数と国語の点数
- 配布されたPCについてのスキルテストの点数
- Windowsやインターネットについてのテストの点数
分析方法
証拠の強さ
- SMS:5
- 根拠
- 実験対象校を選定した後に、PCを配るかどうかの抽選を行う学校かそうでない学校かをランダムに振り分け、その上で校内でPCを配るかどうかの抽選をランダムに行っている。(2段階のランダム化を行なっている)
- PCを配る前のテスト(事前調査)のスコアと配ってから約5ヶ月後のテスト(フォローアップ調査)のスコアを用いた前後比較も行っている。
サンプル
- ペルーの学力の低い公立の小学校の3-6年生
- PCを配布する学校かそうでないかを学校単位でランダムに選び、その中でさらにPCをもらう生徒をランダムに抽選で選ぶ
- 配布先小学校3~6年生2,851人
- 実験への参加が親から認められた上で抽選でPCが配られた生徒
- 実験への参加が親から認められた上で抽選でPCが配られなかった生徒
- 実験への参加を親から認められなかった生徒
結果
- 配布されたPCに関するスキルは81%上昇する(1%水準で有意)。
- 学力については有意な変化は見られなかった。
- WindowsOSやインターネットについての知識の向上は見られなかった。
- PCを配布された生徒は配布されなかった生徒に比べて学校で努力しなくなる傾向にあった(5%水準で有意)。
- 配布先校の中で、PCを配布された生徒と配布されなかった生徒の交流による影響は見られなかった。
- PCの使用時間が増えると家事以外の活動時間が減少する(10%水準で有意)。
研究の弱点
- 配布された生徒から配布されなかった生徒へのスピルオーバー効果を算出する際の「親しい友達」の有無は自己申告なので必ずしも信頼できない。
書誌情報
- Beuermann, D. W., Cristia, J., Cueto, S., Malamud, O., & Cruz-Aguayo, Y. (2015). One laptop per child at home: Short-term impacts from a randomized experiment in Peru. American Economic Journal: Applied Economics, 7(2): 53-80.