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子どもに関する所得税控除

スペインにおける子どもに関する所得税控除による母親の就労・出産に与える効果

評価指標

効果

証拠の強さ

評価指標

出産

効果
証拠の強さ
評価指標

就労率

効果
証拠の強さ

ポイント

  • 2003年にスペインで行われた所得税控除制度の改革によって、出産数は4.6%増え、3歳未満の子を持つ母親の就労率は1.9%上昇した。

  • これらの効果は、学歴の低い女性に対してより大きかった。

文献選定/レビュー作成

  • 慶応義塾大学 伊芸研吾

背景

  • 出産と母親の就労は、通常負の関係にあると考えられる。
  • 研究対象の所得税控除制度改革は出産の増加と母親の就労率の上昇を同時に狙ったものであり、両指標にどのような影響を与えるかは不透明。

介入

  • 全家庭に対する所得税の児童税額控除額を大幅に増加(出産の増加が狙い)。
  • 就労を条件に、3歳未満の子を持つ母親への所得税控除を新規導入(就労率の上昇が狙い)。

評価指標

  • 出産:調査の直近1年間で出産したか。
  • 就労:調査時に働いているか、労働市場に参加しているか、労働時間。

分析方法

  • 出産:プールしたクロスセクションデータを用いた線形確率モデルによる前後比較
  • 就労:差分の差分法

証拠の強さ

  • 出産:SMS:2
  • 就労:SMS:3
  • 根拠
    • 出産:非介入群がない前後比較で、いくつかの変数をコントロールしている。
    • 就労:介入群を3歳未満の子を持つ母親、非介入群をそれ以外の母親とした差分の差分法を用いている。

サンプル

  • 四半期に一度行われる労働力調査(1992年第1四半期~2008年第4四半期)。
  • 18歳~45歳のパートナーと同棲している(婚姻関係にあるかは問わない)女性。

結果

  • 4.6%出産数が増えた。
  • 出産への効果は、31歳以下、低学歴、それまで子がいなかった女性の場合により高い(それぞれ6.6%、8.8%、7.0%)。
  • 就労率が1.9%上昇した。
  • 就労よりも労働参加への効果が高いため、失業が増えたことが示唆される。
  • 就労への効果は、31歳以下、低学歴の女性の場合により高い(それぞれ7.3%、4.8%)。
  • 就労に負の影響があると考えられる児童税額控除額の変更の影響を取り除いた場合、3歳未満の子を持つ母親への所得税控除が就労に与える効果は5%となり、元の効果より大きくなった。
  • 3歳未満の子を持つ母親の労働時間は週あたり0.4~0.7時間、減少した(サンプルの平均労働時間の1~2%に相当)。

研究の弱点

  • 出産の分析は介入群の制度改革前後の傾向の変化を見ているに過ぎないため、出産に影響を与える他の要因が存在した場合、その影響を除去できない。
  • 就労に関する差分の差分法について、介入群と非介入群の間で平行トレンドの仮定が成り立つか検証していない。

書誌情報

  • Azmat, G., and González, L. (2010) Targeting fertility and female participation through the income tax. Labour Economics, 17(3): 487-502. https://doi.org/10.1016/j.labeco.2009.09.006

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