区立小学校での補習
国語と算数の補習を目的とする小学校基礎学習教室が成績に与える効果
- 評価指標
算数と国語の点数
ポイント
文献選定/レビュー作成
背景
- 足立区の子どもたちの社会経済的状況は、一般的に厳しい。学費援助を受けている人の割合は全国平均を大きく上回っており、2013年度の全国平均は15.7%だが足立区は35.8%となっている。
- 足立区において一部の公立小学校の3年生と4年生を対象に実施した国語と算数の補習の効果を検証する。
介入
- 小学校3,4年生に国語と算数の補習を行う。
- 小学3年生までに習得するべきとされている「四則演算の基礎」と「漢字の書き取り」を扱う。
- 受講者は国語と算数どちらも受講する。
- 実施時間は1回の授業が90分。
- 週に1回、前期と後期で15回ずつ実施される。
- 前期は小学2年生までの内容を扱う。
- 後期は小学3年生の既習範囲を扱う。
評価指標
- 年一回行われる「足立区基礎学力定着に関する総合調査」の算数、国語の点数
分析方法
証拠の強さ
- SMS:3
- 根拠
- 操作変数法が用いられている。
- 操作変数は補習対象者が最大20名であることを用いて補習対象者が多い学校では補習対象となりづらいことを用いている。
サンプル
- 足立区の小学校47校(北部24校、南部23校)。
- 一小学校あたりの補習の上限人数は3・4年生合わせて20人。
- 2015年の小学3年生の国語のテストの受験者数は補習受講者が427人、非受講者が2898人。
結果
- 補習は国語の正答率を上昇させる(偏差値換算で0.66上昇、5%水準で有意)。
- 補習を受けていない生徒の国語・算数の基準化された正答率は51→54。補習を受けた生徒では37→45。
- 正答率は補習を受けていない生徒の方が補習の前後とも正答率が高いが、正答率の上昇率は補習を受けた生徒の方が高い。
研究の弱点
- 補習を受ける生徒の選抜方法が統一されておらず各教員の裁量によるものとなっている。
書誌情報
- Bessho, S. I., Noguchi, H., Kawamura, A., Tanaka, R., & Ushijima, K. (2019). Evaluating remedial education in elementary schools: Administrative data from a municipality in Japan. Japan and the World Economy, 50: 36-46.
- 別所 俊一郎、田中 隆一, 牛島 光一, 川村 顕, 野口 晴子 「区立小学校での補習の効果:足立区のケース」, 財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」令和元年第6号(通巻第141号)2019年12月