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乳幼児向け保育サービス拡充

ドイツにおける乳幼児向け保育サービスの拡充による出産数に対する効果

評価指標

効果

証拠の強さ

評価指標

出産

効果
証拠の強さ

ポイント

  • 3歳未満の乳幼児向けの保育サービスの導入および定員の拡充によって、出産数が増え、第二子や第三子の出産が増えた。

  • 検証した保育サービスの拡充は児童手当よりも5倍、費用対効果に優れていることが分かった。

文献選定/レビュー作成

背景

  • 西ドイツでは、3~6歳の子どもは幼稚園に入園することができるが、3歳未満の乳幼児に対する保育サービスは2000年代中盤までほぼ存在しなかった。
  • ドイツ政府は出生率上昇を目的として、2005~2008年にかけて乳幼児向けの公的な保育サービスの導入と同サービスの定員の拡充を行った。
  • 同期間中、西ドイツでは保育サービスの定員が大幅に増加したものの、行政手続きや規則の影響で郡によって定員の増加率に差が生じた。

介入

  • 3歳未満の保育サービスの定員の増加(分析では、保育サービスのカバー率(3歳未満の子どもの総数に対する保育サービスの定員の割合)の上昇によって表される)。

評価指標

  • 15~44歳の女性1,000人当たりの出産の数。

分析方法

  • 郡を分析単位とした差分の差分法。

証拠の強さ

  • SMS:4
  • 根拠
    • 介入群(介入前後の保育サービスのカバー率の上昇度が中央値以上の郡)と非介入群(上昇度が中央値未満の郡)の介入前後の比較を行っている。
    • 中央値の上下で郡を分ける変数の他に、保育サービスのカバー率そのものを説明変数に用いている。
    • 差分の差分法だが、並行トレンドの仮定や郡の間で定員増加率の違いの外生性を丁寧に検証し、介入の状況が準実験的であることを示している。

サンプル

  • 西ドイツの325すべての郡。
  • 出生率の計算対象は15~44歳の女性。

結果

  • 保育サービスのカバー率が10%ポイント上昇すると、1,000人の女性当たりの出産数が2.8%増えた。
  • 保育サービスのカバー率が10%ポイント上昇すると、第二子と第三子の出産がそれぞれ4%、7%増えた。
  • 上記の効果は出産の前倒しによってもたらされたとも考えうるが、分析の結果、出産の前倒しは確認できなかったため、女性が生涯に出産する子の数(完結出生児数)に対してもプラスの効果があることが示唆される。
  • 出産時の子の体重や身長に対する介入の影響は確認できなかった。
  • 保育サービスの拡充は女性の就労にもプラスの効果があった。
  • 費用便益分析の結果、今回検証した保育サービスの拡充は導入済みの児童手当よりも5倍、費用対効果に優れていることが分かった。

研究の弱点

  • 特になし。

書誌情報

  • Bauernschuster, S., Hener, T., and Rainer, H. (2016) Children of a (policy) revolution: The introduction of universal child care and its effect on fertility. Journal of the European Economic Association 14 (4): 975–1005. https://doi.org/10.1111/jeea.12158

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