育休期間と子育て支援施策

背景

• ほとんどの高所得の国で、家族政策が実施されているが、実際に効果はあるのか。
• 仮説①：女性が仕事と子育てを両立しやすくなり、社会規範も変化した。
• 仮説②：雇用者の負担が増えるため、妊娠可能年齢の女性が雇用されにくくなった。

介入

• 1970年〜2010年にかけての高所得諸国における「育児休業期間の長さ」、「育休期間のうち所得支援が行われる割合」、「出産前収入のうち育休期間中の所得支援で代替される割合」、「子育て支援施策」の変化

評価指標

• 女性の雇用率
• ジェンダーギャップ…①男女間の雇用率の差、②男女間の賃金の中央値の差（フルタイム労働者に限る）
• 合計特殊出生率

分析方法

• パネルデータを用いた回帰分析

証拠の強さ

• SMS:2
• 根拠
  • 年固定効果と国固定効果を含めて回帰分析を行っている。

サンプル

• the OECD Family Database, Social Expenditure Database and Employment Database
• 女性の雇用率、雇用率で測ったジェンダーギャップ…サンプルサイズ667、22か国
• 賃金で測ったジェンダーギャップ…サンプルサイズ340、22か国
• 出生率…サンプルサイズ806、22か国

結果

• 育児休業の長さは、女性の労働に僅かながらポジティブな影響を与える。
• 女性の雇用率は、育児休業の長さが50週間までなら上昇するが、それ以上長くするとむしろ減少する。
• 影響は学歴によって異なる。育児休業期間が長くなると、低学歴層では、男女の賃金格差が縮まるが、高学歴層ではむしろ拡大する。
• 幼児教育や保育に対する財政支出の増加が、女性の労働にポジティブな影響を与えることが示唆された。

研究の弱点

• 使えるデータが限られていることから、学歴グループ別のサブサンプルで回帰分析する際に、コントロール変数を含めることができていない。そのため、係数推定に欠落変数のバイアスが生じている可能性が高い。

書誌情報

• Olivetti, C., & Petrongolo, B. (2017). The Economic Consequences of Family Policies: Lessons from a Century of Legislation in High-Income Countries. Journal of Economic Perspectives, 31(1), 205–230. https://doi.org/10.1257/jep.31.1.205