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育休の拡大、出産一時金の導入

ソビエト連邦における育休の拡大と出産一時金の導入による出生率への影響

評価指標

効果

証拠の強さ

評価指標

出生率(短期)

効果
証拠の強さ
評価指標

出生率(長期)

効果
証拠の強さ

ポイント

  • 育休拡大と出産一時金導入を行った後1年で出生率は8.2%上昇した。

  • 18年間の子育て費用が1%減少(増加)すると、出生率は3.7%増加(減少)する。

  • 制度変更10年後でも制度変更前と比較して出生率は平均的に14.6%高いままだった。

文献選定/レビュー作成

  • 藤本 一輝(東京大学)

背景

  • 育休の拡大と出産一時金の導入は、直接的に子どもを持つコストを低下させる。
  • 一方、①子どもの人数より「質」(教育)を重視する可能性がある、②育休が長いと労働から離れる時間が増えて収入が大幅に減る可能性があるため、出生率が減少する可能性もある。
  • 短期で出生率が増えたとしても、出産時期が早まっただけで長期の出生率は変わらない可能性がある。

介入

ソ連において1981年に以下3つの変更が行われた。

  • 出産後1年の育休を有給化し、女性の平均月収の27%を定額支給。
  • 無給の育休期間を出産後1年半に延長。
  • 第1子出産時には女性平均月収の38%、第2、第3子出産時には、女性平均月収の76%の出産一時金を導入。

評価指標

  • 15歳から44歳の女性1000人あたりの年間出生数である一般出生率(GFR)

分析方法

  • 地域によって制度変更時期が1年異なることを利用し、一般化された差の差分析を行って短期の出生率への効果を調べている。
  • ①第1子出生率と第2子以降の出生率に対する影響を見る、②制度変更後に前回出産から時間をおいて出産した高齢の母親が増えているか確認する、③制度開始年を基準年としたイベントスタディの枠組みで制度開始前5年間と制度開始後10年間の出生率の変化を見る、という3つの手法で長期の出生率への効果を調べている。

証拠の強さ

  • SMS:3(短期の分析)、SMS:1(長期の分析)
  • 根拠
    • 一般化された差の差分析を行う際、年・州レベルの経済変数(レンガ、コンクリート、木材、肉、缶詰の生産量や小売額)を共変量として統制し、地域間の偶発的な経済ショックをコントロールしている。
    • ①第1子出生率と第2子以降の出生率の観測では、ソ連ではほとんどの女性が少なくとも1人の子どもを持つことから、第2子以降の出生率上昇は出産タイミングの変更だけでなく長期の出生率増加も示していると仮定している。
    • ②高齢の母親が増えているか確認する方法では、本来出産する予定がなかったであろう高齢の母親の出生率上昇は、出産タイミングの変更だけでなく長期の出生率増加も示していると解釈している。
    • ③イベントスタディでは、介入群と対照群がわけられておらず、単純な前後比較となっている。

サンプル

  • Rosstatの非公開データ、1989年の国勢調査データ、2002年の国勢調査データ、そして2010年の国勢調査データより。
  • 一般出生率(GFR:15歳から44歳の女性1000人あたりの年間出生数)を算出する。
  • 人口動態統計を用いて、ソ連崩壊に伴う出生数の過少推計を修正している。

結果

  • 制度変更後1年で出生率は8.2%(1000人当たり76.0から6.2増加)上昇した。
  • 18年間の1%の子育て費用の減少(増加)に対して、出生率が3.7%増加(減少)する。
  • 制度変更10年後でも平均的に出生率は14.6%高いままだった。
  • 制度変更後には第2子以降の出産が特に増加した。高齢で前回出産から間隔の空いた母親による出産が多く、地域別では田舎や教育水準が低い地域での増加が顕著だった。
  • 兄弟姉妹が増えたが、子どもが25 歳から 32 歳になったときのアウトカム(大学卒業率、就業率、公的扶助受給率、既婚率、10代の母親率、平均子ども数など)が有意に悪化した証拠はない。

研究の弱点

  • 特になし。

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