背景
- 「保育が利用しやすく、安価で、満足できるようなものになるにつれて、出生率が上がる」という仮説は広く受け入れられている。
- しかし、この仮説を実証できている研究は、この論文が書かれた時点では、ほとんどなかった。
介入
- 保育所に通っている未就学児の割合:1973年…ほぼ0%→1990年代後半…40%以上
評価指標
- コーホート出生率…同一世代の女性が35歳までに産む平均子ども数
分析方法
- 離散時間ハザードモデルから得た結果をもとにシミュレーション
証拠の強さ
- SMS:2
- 根拠
- 自治体固定効果と個人固定効果をモデルに含めている。
- 年齢やコーホートをモデルに含めることで、景気変動や国レベルでの政策の効果などを介入効果から切り分けている。
サンプル
- 1973年~1998年のノルウェーのデータ
- ①自治体レベルのデータ…the Norwegian Social Science Data Services、435自治体
- ②個人レベルのデータ…Statistics Norway、ノルウェーの女性85,550人
結果
※本論文では、保育所入所率(保育所に通っている未就学児の割合)を「保育所の利用しやすさ」の指標としている。
- 「保育所の利用しやすさ」が高いほど、出生率が上がる。
- シミュレーション結果から、1973年から1998年にかけて、ノルウェーの出生率は約0.5上がったと言える。
- 「保育所の利用しやすさ」は、子どもを2人持つ女性が3人目を産むかどうかに最も影響を与える。
- 「保育所の利用しやすさ」が高くなるまでにかかる年数が短いほど、出生率が上がる。
研究の弱点
- 長期にわたる緩やかな変化から因果関係を識別しているので、「保育所の利用しやすさ」以外の要因が入り込むことを排除しづらい。
書誌情報
- Rindfuss, R. R., Guilkey, D. K., Morgan, S. P., & Kravdal, Øy. (2010). Child-Care Availability and Fertility in Norway. Population and Development Review, 36(4), 725–748.