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家庭保育への支援金

旧東ドイツ地域において家庭保育への支援金が、保育の選択、労働供給及び子どもの発達に与えた影響

評価指標

効果

証拠の強さ

評価指標

公的な保育の減少

効果
証拠の強さ
評価指標

家庭外の私的な保育の減少

効果
証拠の強さ
評価指標

家庭保育の増加

効果
証拠の強さ
評価指標

母親の労働参加率

効果
証拠の強さ
評価指標

母親の労働時間

効果
証拠の強さ
評価指標

母親のフルタイム勤務

効果
証拠の強さ
評価指標

追加的な出生数

効果
証拠の強さ
評価指標

父親の労働参加率

効果
証拠の強さ
評価指標

父親の労働時間

効果
証拠の強さ
評価指標

父親のフルタイム勤務

効果
証拠の強さ
評価指標

子どもの能力

効果
証拠の強さ

ポイント

  • 両親や兄姉など同居する者による「家庭保育」への支援金の影響を評価。保育所など「公的な保育」の利用の減少に加え、友人や近隣住民、親戚、有償のベビーシッターや家庭的保育など同居していない者による「家庭外の私的な保育」の利用も減少し、家庭内で保育することが多くなった。

  • 家庭保育への支援金は、母親の労働供給と出生数にほとんど影響を与えなかった。

  • 家庭保育への支援金は、男児の認知能力・非認知能力の短期的な向上につながった。

文献選定/レビュー作成

  • 大島侑真(東京大学)

背景

  • 特定の保育方法への補助金はその他の保育方法の相対価格を変化させるので、保育に関する選択を変化させると考えられる。
    • 今までとは異なる保育を利用することによって、母親の労働供給に何らかの影響を与える可能性が高い。
    • 保育の質の違いから、子どもの発達に何らかの影響を与える可能性が高い。

介入

  • 2006年7月1日に旧東ドイツのテューリンゲン州で、公的な保育を利用していない2歳児の親に対して家庭保育への支援金を給付する制度が導入された。
    • 第1子…月150ユーロ
    • 第2子…月200ユーロ
    • 第3子…月250ユーロ
    • 第4子以降…月300ユーロ

評価指標

  • 公的な保育(保育所などによる保育)の利用、家庭外の私的な保育(友人や近隣住民、親戚、有償のベビーシッターや家庭的保育など同居していない者による保育)の利用、家庭保育(両親や兄姉など同居している者による保育)の利用
    • それぞれの保育を利用すると1をとるダミー変数
  • 母親の労働参加率・労働時間・フルタイム勤務
  • 追加的な出生数
  • 父親の労働参加率・労働時間・フルタイム勤務
  • 子どもの能力
    • VABS(適応行動を評価する指標)・社会技能・運動技能・日常的な活動における技能・言語能力

分析方法

  • 差の差分析(DID)

証拠の強さ

  • SMS:3
  • 根拠
    • コントロール変数に加え、州固定効果と年固定効果をモデルに含めている。
    • 介入前の期間における被説明変数の推移が、処置群と統制群とで似ていることを確認している。
    • 懸念として、たとえ介入が無くても、テューリンゲン州の未就学児に共通して影響を与える何らかのショックがあったのではないか(共通トレンドの仮定が満たされていないのではないか)ということが考えられる。
    • そこで、この懸念を排除するために、介入の対象ではない3歳〜5歳児のいる家庭をプラセボ・サンプルにした差の差の差推定を行った。
    • ここで、差の差の推定は、「テューリンゲン州の2歳児のいる家庭」と「他の州の2歳児のいる家庭」のoutcomeの変化の差(介入時期前後)に注目している。一方で、差の差の差推定は、「テューリンゲン州の2歳児のいる家庭と他の州の2歳児のいる家庭のoutcomeの変化の差(介入時期前後)」と「テューリンゲン州の3歳〜5歳児のいる家庭と他の州の3歳〜5歳児のいる家庭のoutcomeの変化の差(介入時期前後)」の差に注目している。
    • 差の差の差推定で注目している差がほとんど無ければ懸念は排除できないが、差の差推定と同様に有意な結果が出ているため、結果が頑健である。

サンプル

  1. Socio-Economic Panel(SOEP、ドイツのパネルデータ)
  • 2000年~2010年のデータ
  • 旧東ドイツの1歳〜2歳児がいる世帯に絞る。
  1. German Micro Census(ドイツのクロスセクションデータ)
  • 2005年~2010年のデータ
  • 毎年、ドイツの人口の1%がサンプルに含まれる。
  • その中で、旧東ドイツの2歳児がいる世帯に絞る。

結果

  • 家庭保育への支援金によって、公的な保育を利用する割合は8%ポイント減少、家庭外の私的な保育を利用する割合は18%ポイント減少し、家庭で保育する割合は18%ポイント上昇した。
  • 母親の労働参加率は、全体で見るとほとんど影響がないが、母子家庭または低所得家庭の場合、そうでない家庭と比べて15%ポイントほど低下した。
  • 追加的な出生数は、全体で見るとほとんど影響がないが、子ども1人の世帯では負の影響(-0.42人)がある一方で、2人以上の世帯では正の影響(+0.38人)が出た。
  • 父親の労働参加率と労働時間は上昇し、フルタイム勤務の割合は減少した。
  • 女児よりも男児の認知能力・非認知能力(特に社会技能と日常的な活動における技能)の向上につながった。男児の親の方が家庭保育に切り替える傾向が強く、男児が質の高い保育を受けるようになったということが理由の1つとして考えられる。

研究の弱点

  • 特になし

書誌情報

  • Gathmann, C., & Sass, B. (2018). Taxing Childcare: Effects on Childcare Choices, Family Labor Supply, and Children. Journal of Labor Economics, 36(3), 665–709. https://doi.org/10.1086/696143

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