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留学支援の奨学金(トビタテ!留学JAPAN)

奨学金による留学支援効果と留学による英語力等の向上

評価指標

効果

証拠の強さ

評価指標

奨学金による留学確率の上昇

効果
証拠の強さ
評価指標

奨学金による留学期間の長期化

効果
証拠の強さ
評価指標

留学による英語力の向上

効果
証拠の強さ
評価指標

留学による国際志向性の向上

効果
証拠の強さ
評価指標

留学による外国語コミュニケーション能力の向上

効果
証拠の強さ

ポイント

  • 奨学金によって学部生・大学院生の留学が後押しされた

  • 留学経験によって学生の英語力が33%(標準偏差の1.15倍)向上し、国際志向性が14%上昇するなど、さらなる外国語能力向上につながる姿勢が形成された

文献選定/レビュー作成

  • 辻本篤輝(一般社団法人エビデンス共創機構) 

背景

  • 海外に留学する学生の数はここ数十年で増加し、各国の政府も情報発信や金銭的支援によって学生の留学を奨励してきた
  • しかし、誰が留学するかは個人の性格や希望によって決定されるため、留学の因果効果は単純な比較ではわからない
  • 留学の因果効果は測定が難しいうえ、特にアジア圏の学生で検証したものが非常に少ない
  • 本研究では事業実施前から事業者と研究者が協働することで留学の因果効果測定および奨学金の効果検証を行った

介入

海外留学奨励を目的とした奨学金の支給

  • 奨学生に選ばれると、出発前に授業料と航空券代として1440~2410米ドル、渡航後は生活費として毎月1150~1540米ドルが支給される

  • 選抜プロセスや選抜基準は以下の通りである

    • 志願者は大学を通じて、複数あるコースのうち自身の留学先・学習分野などに応じた1コースに応募した
    • 書類審査後2回に亘る面接(個人面接とグループ面接)が協賛企業に担当者によって行われた
    • 奨学金支給可否の最終的な決定は、書類選考と2回の面接(個人面接とグループ面接)の加重平均の点数に基づいたが、点数だけで合否が決まったわけではない
      • 点数が合格点より若干低い学生でも、すべての面接官からの合意や、世帯収入が一定基準以下の場合には、奨学金を獲得できる場合があった
      • 応募者数が一定数いるのに合格者がいない大学からは誰かを合格させる、といった大学レベルの調整も行われた
    • 選考基準は、応募時の外国語能力に依存せず、好奇心や情熱といった学生の留学志望動機が中心

評価指標

2018年1月の選考面接時に実施したベースライン調査の後、2019年10月と2020年6月に追跡調査を行った

  • 奨学金が留学に与える影響

    • 4週間以上の留学をしたかどうか
    • 留学期間
  • 留学(4週間)が学生に与える効果

    • 語用論的な英語力を測る試験のスコア(12段階)
      • 定型文を文脈に応じて使えるかを測っている

    • 応用言語学において将来の言語能力の発達を決定づけるとされている要素
      • 国際的指向性(6段階)
        • 自己がどの程度世界と関わっているのかを表す個人の態度や性格
        • 以下4項目の回答の平均
          1. 国際的な問題について意見を持っている
          2. 日本の身近な地域に住む外国人を助けるボランティア活動に参加したい
          3. 日本の学校に留学生がいれば話をしたい
          4. 外国のニュースをよく読んだり見たりしている
      • 外国語コミュニケーション能力の認知(0~100)
        • 以下の4つの場面において、訪問国で使う言語でどの程度コミュニケーションができると思うかを0%(全くできない)から100%(とてもできる)まで尋ねて回答、分析にはその平均値を利用
          1. 友達同士で話す
          2. 初めて参加した会議で話す
          3. 初めて会った人と話す
          4. 大勢の知らない人の前で発表する

分析方法

  • 奨学金が留学に与える影響

    • 選考時のスコアの基準値付近にいる学生で基準値を超えたかどうかと留学期間の関係を見ている
  • 留学(4週間以上)が学生に与える効果

    • ファジーな回帰不連続デザイン
      • 奨学金受給のための選考時のスコアが基準値以上かどうかを留学する確率を予測する操作変数としたうえで、基準スコアの近くでは、合否がほぼランダムに決まる状況を利用した

証拠の強さ

  • 奨学金が留学に与える影響
    • 4
      • 選考時のスコアの基準値付近中にいる学生で基準値を超えたかどうかとアウトカムの関係を見ている
      • 選考時のスコアの基準値付近で候補者の属性のうち観察可能なものについては統計的に有意な差はないことを確認している
      • 基準値を超えるかどうかは基準値付近においては準ランダムであると考えることができる
  • 留学(4週間以上)が学生に与える効果
    • 4
      • 選考時のスコアの基準値付近で候補者の属性のうち観察可能なものについては統計的に有意な差はないことを確認している
      • スコアの恣意的な操作がないことも確認している

サンプル

  • トビタテ!留学JAPANに応募した日本の大学等に在籍している大学生・大学院生のうち書類選考を通過して面接を受験した709名
    • サンプル学生709人のうち、男性は48%、国公立大学在籍者は67%、東京都内の大学在籍者は38%
    • このうち451名が面接選考を通過して奨学金を受給し、258名が面接選考を通過しなかった

結果

()内には効果の大きさが標準偏差の何倍にあたるかを記している

  • 奨学金が留学に与える影響

    • 奨学金によって学生の留学する確率が38パーセントポイント上昇している(奨学金非受給者の留学する割合:0.45)
    • 奨学金によって4.8ヶ月長く留学している(奨学金非受給者の平均値:3.58か月)
  • 留学(4週間以上)が学生に与える効果

    • 英語力 33%(1.15標準偏差)上昇
      • 特に女性や学部生に対して効果が大きい
    • 国際的志向性 14%(0.68標準偏差)上昇
    • 外国語コミュニケーション能力の認知 43%(1.14標準偏差)上昇
      • 特に男性に対して効果が大きい
    • 上記の3指標について、留学の効果は応募時の英語力が低い学生の方が大きい

研究の弱点

  • いくつかの指標が自己申告に基づくものであること
  • 留学の非認知能力への影響が観察されなかったことが本当に効果がなかったことを意味するのか、留学で異質な学生と触れ合うことで回答者自身が非認知能力を比較する対象が変化したことにより影響しなかったように見えているだけなのかが不明
  • トビタテ!留学JAPANに応募した学生間で留学の効果を検証しているため、この研究結果がどこまで他の学生に適用できるかは不明
    • 応募者は東京都内の国公立大学の学生がやや多かった

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