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教師の持ち上がり

教師の持ち上がりが生徒の成績に与える影響

評価指標

効果

証拠の強さ

評価指標

スペイン語、数学、社会、理科のテストの点数

効果
証拠の強さ

ポイント

  • チリ全土における学生と教師のデータを用いて、教師の持ち上がり(同じ教師が同じ学年を連続して担当すること)効果を全国規模で評価した初めての研究である。

  • 教師の持ち上がりによって生徒の成績を0.02標準偏差向上した。

  • 教師の持ち上がりにより成績向上だけでなく出席率や教師の生徒に対する期待が向上し、問題行動が減少した。

文献選定/レビュー作成

  • 島田健(ユニファ株式会社)

背景

  • 世界のいくつかの国においては教師の持ち上がり制が広く活用されているが、その効果については詳細な研究が不足している。
  • チリでは7年生から8年生(年齢13〜14歳、中学2〜3年生に該当)に進級する学生の50%以上が同じ教師が担当しているため、教師の持ち上がり効果を評価することは特に重要である。
  • これまで教師の持ち上がり制に関する研究は主にアメリカで行われてきたが、持ち上がり制はアメリカの教育システムでは一般的でないため、その効果に関する評価が限定的であった。

介入

  • 7年生と8年生の2つの学年を連続して担当する教師。

評価指標

  • 8年生時点におけるSIMCE(チリの全国標準化テスト)の試験科目(スペイン語、数学、社会、理科)の合計点を標準化したテストの点数

分析方法

  • 固定効果モデルおよび回帰不連続デザイン

証拠の強さ

  • SMS: 4
  • 根拠
    • 生徒や教師個人、学校固有の特性(観察できないバイアス)をコントロールすることで、教師の持ち上がり効果そのものの影響を分析している。
    • 定年退職直前の学年では教師が同じクラスを担当するのが一般的だが、退職年齢を過ぎると新しい教師が担当することが多くなる。この定年退職年齢の前後で教師の持ち上がり状況が大きく変わる点を利用し、退職する教師が担当するクラス(教師の持ち上がりのないクラス)と退職しない教師が担当するクラス(教師の持ち上がりのあるクラス)を比較した。

サンプル

  • チリにおける2002年以降の全生徒(小学校から高校まで)および対象生徒に各科目を教える教師。
  • 2004年、2007年、2009年、2011年に実施された8年生のSIMCEのデータ。
  • チリ教育省(MINEDUC)の学生登録記録に登録されている789,270人の生徒のうち、テストの点数や生徒の重要な情報(年齢、性別など)が欠けているデータを除外した696,482人。
  • MINEDUCの教育機関に関するデータベース(RBD : Registro Base de Datos)に登録されている46,256人の教師、31,837クラス、6,260校。

結果

  • 教師の持ち上がり効果は生徒の成績に対して固定効果モデルでは0.02標準偏差、回帰不連続デザインでは0.11標準偏差を向上させることが確認された。
  • 教師の持ち上がり効果は異なる科目、異なる年齢層の生徒に対して一貫してポジティブであった。
  • 生徒の成績以外にも、生徒の学校での生活態度や教師の生徒に対する期待も向上させることが確認された(出席率は0.05標準偏差向上、授業開始時の問題行動は4.1パーセントポイント減少、教師が生徒に対して期待する確率は1.7パーセントポイント向上)。
  • 同じ教師が同じ学年を連続して担当する回数が多いほど、生徒の成績が向上することが確認された。

研究の弱点

  • 教師の生徒に対する期待や生徒の問題行動の減少といった一部の結果については、教師のアンケート評価に基づくものであるため、主観的な偏りが含まれる可能性がある。

書誌情報

  • Albornoz, F., Contreras, D., & Upward, R. (2023). Let’s stay together: The effects of repeat student-teacher matches on academic achievement. Economics of Education Review, 94, 102375. https://doi.org/10.1016/j.econedurev.2023.102375

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