教科担任制
米国の小学校における教科担任制の展開が学業成果に与える影響
- 評価指標
算数の成績
- 評価指標
国語の成績
- 評価指標
理科の成績
ポイント
文献選定/レビュー作成
背景
- 教科担任制の展開により、教員は専門科目の指導に集中することができるため、指導パフォーマンスが向上し、最終的に児童の学力が向上することが期待できる。
- 一方、教員が特定の教科のみ受け持つことによって、児童とコミュニケーションする時間が少なくなり、児童に合わせた授業の提供が難しくなった結果、教育が非効率になるとの指摘も存在する。
- 実際、教科担任制が児童の成績に負の影響を与えることを発見した先行研究が存在。
- 本研究は、異なる条件下で教科担任制の展開の効果検証を行うものである。
- 小学校において、既に教科担任制が一つのプラクティスとして普及している米国・ノースカロライナ州を対象に研究を実施。
介入
- ジェネラリスト教員の専門教員への転向
- 1-2教科に特化して指導する教員を専門教員、3-4教科を担当する教員をジェネラリスト教員と定義。
- 教員を専門教員に転向するかは、校長が毎年実績を評価し決定する。
- 専門教員の割合は、4年生と5年生それぞれで約25%、約37%。
評価指標
- 児童の算数、国語、理科の3教科の成績。
- 学校レベルの成績の集計値(学校、教科、学年、年度毎に集計)
分析方法
- 固定効果モデル
- 児童レベルの分析では教師の固定効果を、学校レベルの分析では学校の固定効果をコントロール。
証拠の強さ
- SMS:3
- 根拠
- 教員固有の特性(経験・資質等) をコントロールすることで、教員が特定の教科を専門とする効果そのものの影響を分析している。これにより、校長はよりパフォーマンスの高い教員を専門教員として任命する傾向があるというバイアスに対処することが可能。
サンプル
- アメリカ・ノースカロライナ州における教員と小学4・5年生の児童が対象。
- 2011-12年度から2015-16年度のK–5(アメリカの教育制度における幼稚園から5年生までの学年を指す)を担当した55,054名の教員と、4・5年生担当の23,552名の教員のデータを利用。
- さらに、4・5年生の教員が受け持った約665,000名の児童のテストスコアを利用。
結果
- 算数と国語の分野では、教員が特定教科を専門とした時、指導した児童の算数の成績は0.04標準偏差、国語は0.01標準偏差低下(いずれも1%水準で有意)。学校レベルの成績に有意な影響はなし。
- 教員が理科を専門とした時、指導した児童の成績への有意な影響は確認できないが、学校レベルで見た場合成績に有意な影響あり。理科の専門教員が受け持つ児童の割合が1標準偏差増加すると、学校レベルの理科の成績は0.02標準偏差増加(1%水準で有意) 。
研究の弱点
- 本研究は短期間の観察結果を対象としており、長期的な影響については別途検証が必要。
- 教科担任制の実施方法や教員へのサポート体制のあり方を考慮に入れていない。教員の人材開発施策(コーチングの実施等)や評価体制によっては、施策が効果的となる可能性あり。
書誌情報
- Bastian, K. C., & Fortner, C. K. (2020). Is Less More? Subject-Area Specialization and Outcomes in Elementary Schools. Education Finance and Policy, 15(2), 357-391. https://doi.org/10.1162/edfp_a_00278