ディーゼル車規制
ディーゼル車規制が大気質、土地価格、および乳児の健康に与える影響
- 評価指標
大気の質
- 評価指標
土地価格
- 評価指標
乳児の健康
ポイント
文献選定/レビュー作成
背景
- 自動車は、浮遊粒子状物質(SPM)や窒素酸化物(NOx)などの大気汚染の主要な原因となっている。
- 自動車NOx・PM法によって自動車の規制が8都府県で実施された。
- 首都圏の1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)では地域の実情にかんがみ、排出基準に適合しないディーゼル車の走行を禁止する独自の条例を導入した。
- この研究は、ディーゼル車規制が大気質、土地価格、および乳児の健康に与える影響を評価する。
介入
- ディーゼル車規制では、特定の排出基準を満たすか、フィルターを装着したディーゼル車のみが指定区域内で運行できる。
- 規制は段階的に実施され、数年間にわたって厳格化された。
- 自動車Gメンによる立入検査や路上検査が行われる。
- 違反した場合の罰則としては、50万円以下の罰金や氏名公表が行われる。
評価指標
- 大気質: SPM、NOx、NO2などの規制対象汚染物質の濃度。
- 土地価格: 大気質の改善による経済的影響を評価するために、公的な土地価格。
- 乳児の健康: 乳児死亡率、早期新生児死亡率、低出生体重児(LBW)の割合。
分析方法
- ディーゼル車の交通量が多い地域と少ない地域、規制の実施前後のデータを用いて差分の差分(DID)推定量で分析を行う。
証拠の強さ
- SMS: 3
- 根拠
- 首都圏の1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)を対象にディーゼル車の交通量が多い地域と少ない地域を比較したDIDで分析を行っている。
- イベントスタディを用いてパラレルトレンドが満たされていることを確認している。
サンプル
- 首都圏の1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)
- 分析期間は1990年から2010年の年別データを使用しており、東日本大震災の影響を受けた年を除外している。
- データソース: 全国道路・街路交通情勢調査/環境数値データベース/公示地価データ/人口動態調査
結果
- 大気質: 対象のディーゼル車の走行が1000台減少すると、SPMが7.17%、NOxが9.08%減少する。
- 土地価格: 対象のディーゼル車の走行が1000台減少すると、土地価格が2.74%上昇する。
- 乳児の健康: 対象のディーゼル車の走行が1000台減少すると、死産の低出生体重児の割合は3.5%減少し、乳児死亡率は0.99%改善する。早期新生児死亡率は0.46%減少する。
- 費用便益分析によると、便益が費用の約14倍に達する。
研究の弱点
- スピルオーバー効果が十分に考慮されていないため、区域外での車両排出削減に伴う大気質の改善効果が過小評価している可能性がある。
- 大気汚染が風により広範囲に拡散されている場合、規制の効果を過小評価している可能性がある。
- 死産に関する分析では平行トレンドの仮定が満たされていないため、解釈には注意が必要である。
書誌情報
- Kang, C., Ota, M., & Ushijima, K. (2024). Benefits of diesel emission regulations: Evidence from the world’s largest low emission zone. Journal of Environmental Economics and Management, 125, 102944. https://doi.org/10.1016/j.jeem.2024.102944