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スタジアム・アリーナ

スタジアム整備が自治体の税収に与える影響

評価指標

効果

証拠の強さ

評価指標

人口1人あたりの売上税収

効果
証拠の強さ

ポイント

  • MLBアトランタ・ブレーブスのスタジアム移転を事例に、ボールパークを核とする複合エリア開発が郡の売上税収に与える影響を、合成コントロール法を用いて検証した研究である。

  • スタジアム開場後、1人あたり四半期約1ドルの売上税収増加が観察されたものの統計的に有意ではなく、その背景として、地域内での消費の移転やスタジアム周辺商業施設の収益規模の限定性、さらに観客数の増加が必ずしも当該エリアでの消費増加につながらなかった可能性が示唆される。

  • スタジアム整備を地域活性化策として導入する際には、税収効果が限定的にとどまる可能性や、消費の地域内移転が生じうる点を踏まえ、経済効果のみを目的とした政策手段としてではなく、他の政策目標との組み合わせの中で位置づけることが重要である。

文献選定/レビュー作成

  • 舟橋弘晃(中京大学)

背景

  • スタジアム・アリーナ整備の経済効果は、大都市圏全体では限定的だが、立地する自治体(市や郡)に限れば、周辺から消費を呼び込むことで経済的利益をもたらす可能性がある。
  • 2017年、MLBアトランタ・ブレーブスがコブ郡に移転し、同郡は3億ドルの公的資金を投じて経済活性化と税収増を目指した。
  • 新スタジアム(Truist Park)は住宅や商業施設を含む複合開発(The Battery Atlanta)の一部であり、年間を通じた集客と経済活動が見込まれる。

介入

  • スタジアムを核としたエリア開発(Truist ParkとThe Battery Atlantaの整備)

評価指標

  • 地域の消費活動を示す指標として、人口1人あたりの売上税収(四半期単位)を用いている。
  • データはジョージア州公表の月次売上税収配分データを使用し、季節変動を抑えるため四半期ごとに集計している。

分析方法

  • 合成コントロール法

証拠の強さ

  • SMS:3
  • 根拠
    • 重み付けした対照群ユニットから合成対照群を構築し、反実仮想を設定している。
    • 複数の感度分析を実施し、推定結果の頑健性を検証している。

サンプル

  • 分析対象地域は、アトランタ都市圏のコブ郡(介入群、2020年時点の人口約76.6万人)と、他28郡から選んだ23郡(対照群)である。
  • 分析対象期間は2010年から2019年で、月次データを四半期ごとに集計している。2017年第2四半期以降を介入後とする。

結果

  • スタジアム開場後、コブ郡では1人あたり四半期約1ドルの売上税収増加が観察された。野球シーズン中(第2~3四半期)は平均1.45ドル、オフシーズンは平均0.44ドルと季節変動が確認された。ただし、この増加は統計的に有意ではなかった(p値=0.38)。
  • 売上税収が有意に増加しなかった背景として、増加した売上の約3分の1が地域内消費の移転に由来していたこと、スタジアムの周辺商業施設の収益が全体の約2割にとどまっていたこと、さらに試合観客数と税収増加額との相関が弱かったこと(r=0.12)が示されている。
  • 年換算では約300万ドルの税収増に相当し、これは税率を用いて換算すると、郡内の事業者による課税対象売上が約1億5,000万ドル増加したことを意味する(郡内売上の約1%)。
  • 地域内消費の移転を加味すると、スタジアム整備による純粋な税収増は約1,000万ドルと推定され、郡によるスタジアム関連の年間財政負担(約2,480万ドル)の約40%にとどまる。

研究の弱点

  • スタジアム開場後約3年間の平均的な効果を推定しているため、開場直後の一時的なハネムーン効果を含む可能性がある一方で、周辺エリアの長期的な開発効果は捉えられていない。
  • 分析対象は売上税収に限られており、不動産価値の上昇による固定資産税収の増加など、スタジアム整備に伴う外部効果は考慮されていない。

書誌情報

  • Bradbury, J. C. (2024). Sports stadiums and local economic activity: Evidence from sales tax collections. Journal of Urban Affairs, 46(1), 139-159. https://doi.org/10.1080/07352166.2022.2044837

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