スタジアム・アリーナ
スタジアム・アリーナ整備が周辺地域の新規事業所数・雇用者数に与える影響
- 評価指標
周辺地域(1・3・5マイル圏内)における新規事業所数
- 評価指標
周辺地域(1・3・5マイル圏内)における新規事業所の従業員数
ポイント
米国の10都市圏で2002年から2005年の間に開場したスタジアム・アリーナを対象に、施設の開場が周辺地域における新規事業所の開業および雇用者数に与える影響を検証した研究である。
全体としては、施設の開場が周辺地域の新規事業所数や雇用者数を有意に増加させたという証拠は得られなかった。産業別にみると、施設から1マイル以内の飲食業に限り雇用者数の有意な増加が確認されたが、その増加幅は各国勢調査区(小地域)あたり平均約1.25人にとどまる。
文献選定/レビュー作成
背景
- 北米のプロスポーツ施設建設には多額の公的補助金が投入されており、その正当化として施設がもたらす経済効果(新規雇用や事業の創出)がしばしば主張される。
- しかし、過去の研究の多くは都市圏や郡レベルの集計データを用いており、施設周辺における局所的な影響を事業所レベルで詳細に分析した研究はなかった。
- 本研究は、施設の新設が周辺地域での新規事業所の開業や雇用の創出に実際につながっているかを検証するものである。
介入
評価指標
- 開業から1年未満の新規事業所の数と、その事業所で働く従業員数。
- データは、Dun and Bradstreet (D&B) 社が持つデータベース(2002年・2006年それぞれ第2四半期)を使用し、事業所単位の情報を国勢調査区単位に集計したものである。
分析方法
証拠の強さ
- SMS:3
- 根拠
- 施設開場前後のデータを用い、施設周辺エリアと遠隔エリアの変化量を比較する差の差モデルを用いているため。
- また、国勢調査の社会経済的変数(年齢、人種、学歴、所得など)や、都市圏・産業の固定効果を統制している。
サンプル
- 2002年から2005年の間にスタジアム・アリーナ(NFL、NBA、MLB、NHL)が開場した米国の10の都市圏の国勢調査区、計7,996区。
- 各区画の地理的中心点を基準に、施設周辺エリア(1・3・5マイル圏内)と遠隔エリア(同一都市圏内のその他の地域)に分類している。
- 産業別の分析では、製造業、卸売業、小売業、金融・保険・不動産業、サービス業、飲食業、ホテル業に区分して推定を行っている。
結果
- 新規事業所数については、1マイル圏および5マイル圏では有意な変化は確認されず、3マイル圏では負に有意な推定結果が得られた。一方、雇用者数については、いずれの距離圏でも有意な変化は確認されなかった。このため、施設開場が周辺地域の新規事業所数や雇用を増加させたという証拠は確認されなかった。
- 産業別の分析では、施設から1マイル以内の飲食業に限り、新規事業所における雇用者数が統計的に有意に増加した。ただし、その増加幅は平均約1.25人にとどまり、施設内の飲食店が含まれている可能性もあることから、この結果の解釈には注意が必要である。
研究の弱点
- D&Bデータは異なる時点の横断データを繰り返したものであり、同一事業所を継続的に追跡するパネルデータではない。そのため、既存事業所の撤退・拡張といった動態的な変化を把握することができない。
- 本研究は新規開業に焦点を当てているため、施設の新設が既存事業所に与えた影響については評価できていない。
書誌情報
- Harger, K., Humphreys, B. R., & Ross, A. (2016). Do New Sports Facilities Attract New Businesses? Journal of Sports Economics, 17(5), 483–500. https://doi.org/10.1177/1527002516641168